呼吸音の異常
呼吸音の異常とは?
呼吸音とは、空気が肺に出入りする際に聴診器を使って胸部から聞こえる音のことを指します。
正常な呼吸音は「サーッ」という柔らかい音ですが、肺や気道に異常があると、**通常とは異なる音(異常呼吸音)**が聴こえることがあります。
異常な呼吸音にはさまざまな種類があり、「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)、「パリパリ」「バリバリ」といった捻髪音(ねんぱつおん)、「グジュグジュ」としたラ音(湿性副雑音)などが含まれます。
これらは呼吸器疾患の手がかりとなる重要な所見です。
よくある原因疾患
異常呼吸音の種類によって、考えられる病気が異なります。
喘鳴(ぜんめい):「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音
気道が狭くなった状態で空気が流れるときに生じます。
- 気管支喘息・咳喘息
気道の過敏性が高まり、一時的に狭くなることで喘鳴が出現します。夜間や明け方に強くなる傾向があります。 - COPD(慢性閉塞性肺疾患)
長年の喫煙によって肺がダメージを受け、気道の閉塞が進んだ状態です。慢性的な咳や痰、呼吸困難を伴います。 - 気道異物・アレルギー反応
急激に気道が狭くなるような状況では、強い喘鳴や呼吸困難が生じることがあります。
捻髪音(ねんぱつおん):「パリパリ」「バリバリ」という音
肺胞の周囲で、肺が硬くなったり水分がたまったときに聞こえます。
- 間質性肺疾患
肺が硬くなる病気(線維化)で、乾いた咳や労作時の息切れが特徴です。当院では診療に注力している分野の一つです。 - 心不全(肺うっ血)
左心不全によって肺に水がたまり、細かいラ音や捻髪音が聴こえることがあります。
湿性ラ音:「グジュグジュ」「ブクブク」とした音
気道や肺胞に水分(痰や血液など)がたまったときに聴こえます。
- 肺炎・気管支炎
感染により痰が増え、湿性ラ音が聞こえるようになります。発熱や咳、痰を伴うことが多いです。 - 心不全
肺うっ血により水分が肺にしみ出し、特に下肺野でラ音が出現します。
診断の進め方
呼吸音の異常が認められた場合、どの部位でどのような音(ゼーゼー、ラ音、減弱音など)がいつ聞こえるかを評価し、原因を探ります。
問診では咳、痰、発熱、息切れ、胸痛、夜間・運動時の悪化、喫煙歴、喘息・肺炎・心不全・間質性肺疾患の既往を確認し、診察では呼吸音の左右差、音の種類、血中酸素や呼吸状態を確認します。
当院では胸部レントゲン・CT(肺炎、肺気腫、間質性肺疾患、肺うっ血評価)、血液検査(炎症反応、BNP、アレルギー指標)、呼吸機能・呼気NO検査(喘息、COPD評価)、心電図・心エコー・ABI/CAVI(心不全や心臓性呼吸困難評価)、喀痰検査(グラム染色、培養、結核検査)を実施します。
一方、気管支鏡検査、肺生検、肺拡散能検査などが必要な場合は、地域の基幹病院や専門医療機関へ紹介します。
治療の基本方針
呼吸音異常の治療は、原因疾患に応じて行われます。
- 気管支喘息・咳喘息:吸入ステロイドや気管支拡張薬による治療
- COPD:禁煙とともに、吸入薬や呼吸リハビリなどを組み合わせた治療
- 肺炎・気管支炎:抗菌薬や去痰薬などの内服
- 心不全:利尿薬や心機能を改善する薬剤を使用
- 間質性肺疾患:原因に応じて抗線維化薬や免疫抑制薬などを用いることがあります
呼吸音の異常は、咳や痰、息切れなどの症状がある方だけでなく、健診や診察時に"たまたま"見つかることもあります。
その背景には、感染症から慢性呼吸器疾患、心疾患に至るまでさまざまな原因が考えられます。
当院では、呼吸器疾患の評価・治療に力を入れており、画像診断、肺機能検査、血液検査などを組み合わせた丁寧な診療を行っています。
呼吸音の異常を指摘された方や、呼吸に関する不調を感じる方は、ぜひご相談ください。
